MERIT

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MERIT活動報告

MERIT生対談

武田 香織 × 沈 昇賢
「MERITで生まれた異分野の人とのネットワークは、将来も役に立つと思います」

大学院が目指す人材像を理解し、MERITのカリキュラムを自分の成長の糧として十二分に活かしてきた武田さんと沈さんに、MERITで得た貴重な経験を語っていただきました。

  • MRITE2期生 武田香織さん
  • 武田 香織
    MERIT 2期生
    東京大学マテリアル工学専攻
    博士課程3年
    片岡研究室に所属。修士課程修了後に就職するか博士課程に進むか迷っていた頃、産学官が関わるリーディング大学院に興味を持ち、MERITに応募、2期生として活動。2017年3月に博士課程修了後、富士フイルム R&D統括本部 再生医療研究所に所属。
  • 沈 昇賢
    MERIT 3期生
    東京大学化学生命工学専攻
    博士課程3年
    ソウル大学理学部化学科を卒業後、東京大学に留学、相田研究室に所属。相田教授の勧めでMERITを知り、様々なマテリアル工学への視野が広がると考えてMERIT3期生となる。現在はカリフォルニア工科大学(Caltech)に所属。
  • MRITE3期生 沈昇賢さん
「教えて」と言ってみる経験

 MERIT生になったら、いろいろなマテリアルの専門家と話ができて俯瞰力が養えるかなと期待して参加しましたが、予想以上でした。
 同じ材料の研究者でも、全く畑が違う物理工学など、専攻によって使う用語からものを見る観点まで違います。同じ課題を解くにも見ているスケールが違うし、蓄積してきた知識も違う。物理のMERIT生と話しているうちにアイデアを得て、物理の原理を応用した論文を化学雑誌に出すこともできました。

武田 特に良かったのがコロキウムです。コロキウムが終わった後に自主的に集まって話し合うと、皆視点が違うから思いも寄らない見方が出てきて、それってどうなの?と尋ねる、それが良いコミュニケーションになるんです。東大生って真面目だから何でも自分で調べるけれど、わからなければ訊けばいいんだと。文殊の知恵じゃないですけど、それができるとわかってとても心地よかったです。
 私はMERITで2回留学させていただいたんですが、1回目は薬学部、2回目は医学部でした。私自身は高分子が専門なので、留学先は全く異分野。でもコロキウムで「わからないから教えて」と言う経験を積んでいたおかげで、相手にも教えてもらえたし、自分の分野のことは自信を持って伝えることもできました。研究者も人間力、コミュニケーション力なんだと感じましたね。

 最初は素人っぽい質問をして申し訳ない気持ちがどうしてもあるんですよね。でもコロキウムでは話さないといけない、それで自然と質問できるようになっていきました。素人な質問でも、相手の専門分野の中ですごく重要なことを指摘することだってあるんです。だから他の人からの素朴な質問もよく聴くようになりました。

武田 博士課程の論文を書く時も、異分野の友達に「ごはんおごるから教えてよ」と言えるようになったり、「そんなのあたりまえでしょ」と言われても恥ずかしいと思わなくなったり。知らないことを教え合う中で新しい発見が生まれるんです。

自分で動けば何でもできる

武田 エラントリーの一環でドイツに行った時、ドイツの研究者の先生と知り合って一緒にごはんを食べたら、ちょうど興味のある分野だったので「一度研究室を見せて」と言ったら快く連れて行ってもらえて。それがきっかけで2度目の留学ではその研究室に行くことができ、自分の研究室でやっていない分野の論文を仕上げることができたんです。チャンスは思いの外あちこちに落ちているんだと思いました。

 私もエラントリーで3つの大学に留学して、ディスカッションの中でアイデアができてくる良い経験をしました。積極性があれば何でもできますね。自分の研究を違う研究室の人にアピールする機会も作れます。

武田 MERITは”用意しすぎない”ところがいい。自分で動かないと何もできないけれど、自分で動けば何でもできることが実感できます。研究者に自分から連絡して会いに行くなんて最初は無理だったけれど、MERITで否応なくやることになって、やってみると受け入れてもらえる。それを知って以来、学会でもどんどん研究者に話しかけるようになりました。

 いろいろなMERIT生と友達になれたのも大きいですね。私は留学生なので日本語が得意ではなく発表も英語でしていましたが、友達と交流して日本語力を伸ばすこともできました。もっと交流の機会が欲しいくらいです。

武田 MERIT生との交流は今後も役に立つ気がします。来年には皆全然違う分野や業界に進むことになっているので、何かのタイミングでそのネットワークが役立つかもしれないと期待しています。MERIT生は皆やる気があって発信力もあって、将来もアクティブに活動していそうな人ばかりですから。

研究者としての姿勢を涵養

 MERITの俯瞰講義でいろいろな分野の講師のお話が聴けたのも貴重な経験でした。川﨑先生をはじめ第一線で活躍している先生が、研究者としてどういう足跡を辿ってきたかという話もしてくださって、研究者志望の一人としてとても参考になりました。

武田 私は特別講義で、めったにお会いできない内閣府の方のお話が聴けたのが印象的でした。人をまとめていくにはどうするかという話の中で、リーダーだけでなく、それをサポートする優秀な二番手も必要だと。もし自分が人の上に立ったら、自分が前に出るだけではなくて、その立ち位置を考えて行動しなければという認識を初めて持ちました。同じ研究室のMERIT生は、その話を聴いて官庁に就職するのもいいと考えるようになったそうです。

 私は今、ポスドクとして活動できる研究室を探している最中です。
 今までやってきた超分子ポリマーの設計というテーマも好きですが、これまで学んだ原理を違う分野に適用してみたい。MERITの活動を通じて、クロストークの中から新しい分野を切り拓くような仕事をしたいという気持ちを強くしました。

武田 MERITを通じていろいろな企業を知ったことで、将来設計も視野を広げて考え直すことができました。私は、来年度から企業の研究職として、今新しく始めたドラッグデリバリーの研究を続けていくことになっています。それも、MERITの一環で大学院の研究者として企業の研究員の方とお会いして、食事をしながら研究内容を話したのが決め手になりました。企業では組織的に研究を進めることになりますが、その集団が何をなすべきか、問題を見つけて行ける人になりたいと思います。

(2017年1月取材)