MERIT

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MERIT活動報告

大学院教育における新しい人材育成プログラム

物質科学を基軸として、高度な専門性と科学技術全体を俯瞰するグローバルな視点を併せ持ち、産官学の広い分野で人類社会の課題解決にリーダーとして取り組む人材の育成を目指します。

 

人材プログラム図式

 

五神 真 東京大学総長
  • 東京大学総長 
  • 五神 真

 環境破壊、資源枯渇、地域間格差、金融不安など、人類が地球規模で取り組むべき課題は複雑化し、いっそう深刻になっています。東京大学は、創立以来、研究教育を通じて人類社会に貢献することを目標に掲げています。現在東京大学は、「東京大学ビジョン2020」を掲げ、地球社会における新たな公共性の構築に基づく人類的な課題解決の追求を行動指針とし、多様な人々が連携協力して知恵を出し合う「知の協創の世界拠点」の形成を目指しています。

 物質科学は、物理学・化学・材料科学・電子工学から構成される総合的な学理であり、基礎、応用両面において、科学と技術を支える基盤的な学問です。特に、鉄鋼産業、化学産業、半導体産業など、日本の高い「ものづくり」力の源泉となっています。現在、経済や社会は変革期にあり、産業構造も大きくかわりつつあります。この変化の中で、我が国では、平成28年度にスタートした第五期科学技術基本計画において新しい社会の姿として「超スマート社会」(Society 5.0)を掲げ、それに向けた取り組みが進められています。あらゆるものがインターネットにつながるIoT、人工知能技術、さらにサイバー空間に共有蓄積される莫大なデータによって、様々な革新技術や新しいサービスを生みだし、それらを効果的に活かして、人類社会をより良くしていこうという取り組みです。このような社会の実現の為には、サイバー空間と物理空間をより高度に結びつける技術が必要です。物質科学の革新は、物理空間の情報を効率的にくみ上げるためのセンサーやあらゆる場面で高度な情報処理を行う為の次世代デバイスを生みだす上で鍵となるものです。また、環境負荷を抑え、限られた資源・エネルギーで持続発展可能な社会を作り出すためにも中心的な役割を果たすことが期待されています。そのためには、最先端の研究と共に、基礎から応用までを俯瞰する課題解決型の「統合物質科学」が不可欠です。

 本プログラムは、物理学、化学、材料科学、電子工学を基盤として物質科学に関わる東京大学の3研究科9専攻が結集し、平成24年度から始めたものです。博士前期・後期課程一貫教育を実施し、先端的な物質科学研究を基軸としつつ、グローバルで幅広い視点で人類社会の課題を捉え、それを解決するために「統合物質科学」を学び、新たな社会の仕組みを創り出すことをリードする人材を育成することを目的としています。中間評価においても計画を超えた取組であるとして高い評価を受けており、今後もさらに充実させ、発展的・継続的な運営を行ってまいります。